新たに作ったソフトウェアの紹介も行われた。これは児童向けの漢字変換エンジンで、日本マイクロソフトの協力で、同社の日本語入力ソフト「IME」を基に開発したものだ。
通常、Windows上でWordなどのワープロソフトやメールソフトで日本語を入力する際、例えば「きのう」や「kinou」と入力して(IMEを介して)変換すると、「昨日」や「機能」などたくさんの候補が表示される。
児童生徒が学習する漢字は、学年によって異なる。そこで、IMEの漢字変換で候補表示される単語を、学年に応じた漢字で表示される機能をIMEに加えたのだ。使い方も簡単で、次の画面の通り学年を設定するだけで機能が利用できる。
例示した画面では、漢字学習レベルを小学3年に設定した場合のもの。「きょうし」と入力して変換すると、「教師」ではなく「教し」が表示される仕組みだ。すでにプログラムは完成しており、間もなく配布される予定だ。
総評として中邑教授は、「ICTが学校に入ってきたことによって教育が変わっていく」と切り出した。その理由として、子供たちが新しい能力を手に入れていることを挙げる。
以前は、子供たちに新しい能力を身につけさせるためにテクノロジーを活用しようとしてきた。しかし、モバイル端末がこれだけ普及した現在、モバイル端末を能力の一部に組み込むことで、今すぐできるではないかと説明する。
中邑教授は、「モバイル端末を使えば100点を取れる子供が、どうして0点を取っているのか」と問いかける。そして、テクノロジーをどのように導入するかという議論をやめて、この新しい時代に、テクノロジーを子供たちが手に入れた時代に、どのような教育が必要なのか、有効なのかの議論が必要だと強調する。
中邑教授は、「テクノロジーを使えば、すぐできる、すぐ変わる、ことを実践している子供たちがたくさんいる。では、どんな子供にテクノロジーを渡すのかという議論になる。すると、障害の認定が必要などの制限が出てくる。そうではなくて、必要な子供が誰でも使えるようにするべき」と訴える。
さらに、特別支援学校や特別支援学級での取り組みが、普通学校や普通学級に活かせると話す。中邑教授は、「特別支援学校や学級の先生や児童生徒が持ったノウハウを、普通学校、学級に浸透していけば、児童生徒が自分に応じた学習できる社会が実現される」と展望を語った。