ウェアラブル機器には、主に健康データを収集するリストバンド型、スマートフォンの機能を簡略化した腕時計型、通信機能やカメラ機能を備えたメガネ型、ゲームや映像視聴がメインのヘッドマウントディスプレイ型など、いくつか種類がある。共通して、周辺に溶け込む自然なデザインが好まれる傾向にある。
ウェアラブルはB2BとB2Cで活用できるが、B2Cは多彩なデータをモニタリングするサービスが多く、リストバンド型の端末が利用される傾向がある。血圧などの計測データをスマートフォンやPCに転送して、自分の健康状態を把握するような使い方だ。
B2B向けのサービスでは、従業員の行動をカードで監視・管理する日立製作所の「ビジネス顕微鏡」などが提供されている。このほかにも、軍事や警備などの分野でウェアラブル機器が普及していく可能性がある。
ウェアラブル機器の普及にあたって課題もある。例えば、端末の形状、サイズ、重量などに関して、ユーザーが意識せずに身に付けられるかどうかということだ。ユーザーに意識させないサイズや重量が必要なのだ。
バッテリーの稼働時間も大きな課題だ。現在提供されている端末の駆動時間は、常時利用では短すぎる。例えば、腕時計型端末であれば、通常の腕時計と同様にバッテリーが1年以上持つことが望ましい。
アプリも不足している。コンシューマー分野では、ウェアラブル機器のようなガジェットは血圧などのデータを見るだけでは不十分であり、面白いアプリがなければ流行らない。総務省は、オープンな環境でアプリを開発できる環境を整備していきたいとしている。
ウェアラブル機器はメディアで話題にのぼることが多いものの、現段階では普及しているとは言えない。しかし、現在の時計型やメガネ型だけでなく、あらゆるモノにセンサーが搭載される時代が来る可能性がある。例えば、今後は、洋服のタグやネクタイピン、靴などにセンサーが搭載されるかもしれない。
ITツールやサービスを展開する際、米企業は“まずやってみる”という姿勢で取り組むことが多い。やってみた結果、世論や裁判所がノーと言えば直すビジネススタイルだ。ウェアラブルの分野でも米企業は同様であり、日本企業もこれを見習った方がよいと総務省は提案する。まずは世論や企業姿勢を考慮するのではなく、収益を上げるビジネスモデルづくりに注力し、問題が出た後で解決すればよい。標準的なサービスなどとの互換性も後から考えるとよいだろう。
現在、ウェアラブルの分野は互換性や通信規格などの標準仕様は策定されていない段階だ。現段階においてウェアラブル市場でシェアを獲得できれば、その製品やサービスの仕様をデファクトにできる可能性がある。