「Google Glass」などのウェアラブル機器がICTの分野で話題にのぼるケースが増えてきている。しかし、ウェアラブル機器が普及していくには技術的な課題が多い。例えばGoogle Glassは、メガネ型という形状の特性上、大容量バッテリーを搭載することができない。40分程度しか連続使用できず、ハードウェアのスペックは2世代前のAndroid端末と同程度になる。今後、バッテリーが1日持つ製品が一般化するかが普及の分かれ目になるだろう。
ウェアラブルは時計にも波及している。昨年は、グーグルが時計型端末向けのAndroidを搭載したスマートウォッチ「Android Wear」の発売を開始した。また、アップルが「Apple Watch」を発表し、本格的なスマートウォッチ時代が始まりつつある。
スマートウォッチの分野では、モトローラが時計としての自然さを意識した丸型画面の製品を発表するなど、ファッション性を考慮した製品が主流になっていく。時計は普段似見つけるものであり、ファッション性はバッテリーと同様に市場の拡大を左右する重要な要素だ。
時計型の情報端末などは従来からあり、なぜ改めて注目が集まっているのか。それは、ネットワークの高速化や普及によって、あらゆる端末がいつどこでもインターネットにつながる環境が整い、ウェアラブル機器を多彩な用途で活用できるようになったことが要因だ。端末単体ではなく、“端末+ネットワーク+クラウド”による高度な機能やサービスが実現できるようになったのだ。
例えば、スマートフォンのテザリング機能によって、各種のウェアラブル端末をスマートフォン経由でインターネットに常時接続でき、アプリやクラウドサービスを利用して多彩な使い方ができるようになった。ウェアラブル単体ではなく、クラウドとの連携による付加価値を生み出すことが可能になったのだ。
現在、ウェアラブル機器を利用する際のルールやマナーが定まっていないのが実情だ。社会的に受け入れられるまで時間がかかると想定され、ウェアラブル市場の本格的な展開は2015年以降になる見込みだ。当面はB2Bの特定の用途で広まると予想される。
ウェアラブルがもたらすビジネス機会について、取り組みの多くは実証実験の段階だが、ウェアラブルが活用できる有望なビジネス領域は幅広い。JALは、航空機整備などのオペレーション業務において、ウェアラブルを活用した実証実験を行った。
グラスを装着した技術者が整備を行う際、グラスで撮影したデータをクラウド経由で日本のサポートセンターに送信し、サポートセンターの専門家がリアルタイムにアドバイスや指示を出す。従来はスマートフォンやデジカメで撮影した画像をオフィスに戻って送信し、指示を仰いでいたが、作業がその場で完結するようになった。
グラス型端末は、画面上でのマニュアル表示など、ハンズフリーの作業も実現する。ハンズフリーが有効な業務は多く、例えば、プラント開発といったフィールドワークや施設管理業務などで、作業指示やマニュアルの提示、遠隔サポートなどに応用できる。