「足利市民総発電所構想」では、三つの柱を実現するために、「創電」「節電」「蓄電」それぞれで数々の事業を計画あるいは実施している。その概要は以下のようになる。
<創電>
・公共施設への太陽光発電システム設置事業
・足利市メガソーラー事業
・太陽光発電に係る公共施設屋根貸出し事業
・住宅用太陽光発電システム設置費補助事業
・事業所用太陽光発電システム設置費補助事業
<節電>
・市役所節電・省エネ対策事業
・本庁舎、小中学校へのデマンド監視装置設置事業
・公共施設の電力「見える化」事業
・公園灯・街路灯省電力化事業
・市有施設屋外照明省電力化事業
・市有施設等への省エネ設備等の導入事業
・防犯灯LED化事業
・市民等の節電行動支援事業
・節電エコポイント事業
・一般家庭へのHEMS普及事業
<蓄電>
・生涯学習センターへのピークシフト機能付き蓄電池設置事業
・電気自動車を活用した専用外部電源装置導入事業
・電気自動車普及促進事業
この事業概要を見ると、足利市における発電は、太陽光を基本としている。メガソーラー事業をはじめとして、ソーラーパネルを設置できる公共施設のリサーチだけではなく、住宅や事業者においても、太陽光発電を推進していく計画だ。また節電においては、一般家庭へのHEMS導入も見据えた電力の見える化への取り組みを実施していく。LEDの導入などは、いまや当たり前の施策となっているだけに、そこからさらに一歩も二歩も踏み込んだ節電を目指している。そして蓄電では、蓄電池の設置や電気自動車を活用する事業を計画している。
今回の取り組みで、足利市がモデルケースとしたのが、「スマートグリッド通信インタフェース導入事業」。これは、同市の生涯学習センターに、太陽光発電システムを設置し、電力監視装置としてBEMSを導入し、ピークシフト機能付きの蓄電池を配備するもの。その他にも、市が所有する施設に電力監視装置(BEMS/HEMS)を設置し、手動制御による節電を実施した。また、基幹施設を通信ネットワークで結び、節電状況を公共施設のモニターに表示すると同時に、同市のホームページ「足利市電力見える化サイト」に表示して、電力の可視化を促進させる。さらに、太陽光発電システム設置済の一般家庭のうち、モニターとして10世帯にHEMSを設置する。そして、市が所有するEV(電気自動車)を利用して、停電時に非常用電源として活用できるよう専用外部電源装置も設置する。
こうした一連の取り組みによって、生涯学習センターでは、太陽光発電システムや蓄電池、BEMSの設置により、今後の公共施設における節電・省エネ化のモデルケースとなる。また、電力監視装置を設置した施設(75施設)の電力使用量は、2010年度比で16.8%削減された。そして、生涯学習センターおよび本庁舎に電力の見える化モニター(デジタルサイネージ)を常設し、創電や節電の状況を市民にも伝えている。さらに、モニター世帯を含むHEMS設置世帯における削減電気使用量(平均約240kWh/月)は、未設置世帯(平均約112 kWh/月)を大きく上回るなど、電力の見える化による節電効果の大きさも実証している。
一方、足利市メガソーラー事業では、競馬場跡地(発電出力324kW)および太田市市場町の市有地(発電出力719kW)を活用して、2013年2月から工事に着手している。発電および売電は、2013年7月1日の予定。ちなみに、競馬場跡地では太陽光パネルの下を日除け施設として有効活用するなど、メガソーラー施設自体の利用価値を高め、市民サービスの向上に寄与している。
施策のイメージ図 その他にも、屋根貸出し事業では、2社から59施設に対して、太陽光発電設備3,271kW、年間使用料収入約5,812千円、1,227トンのCO2の削減という内容の提案があった。
同構想の背景には、世界規模で高まっている地球温暖化対策という観点から、再生可能エネルギーへの転換がある。また、原発事故に伴う電力不足対策や、電力の安全保障対策という目的もある。官民そして市民も協力して取り組む足利市民総発電所構想の成否は、今後の日本の地方都市のスマートシティ化を大きく占うものとなる。