クリーン開発メカニズム(CDM)は、先進国と途上国が共同で、CO2削減事業を途上国で実施し、削減量の一部を先進国がクレジットとして取得して自国での削減量に充当できる仕組みを指す。しかし、環境省の川又孝太郎氏は、「CDMクレジットの価格は暴落し、CDMは機能していないのが実情」と明かす。
CDMを補完し、地球規模でCO2削減を促進させることを目的としているのが二国間クレジット制度(JCM)となる。CDMは多国間での取り組みであり、ルールづくりが極めて厳格に行われるため、実際に事業を始めるまでに時間がかかる。一方、JCMは、その名の通り二国間の枠組みであり、二国で設立した合同委員会でCO2の測定や検証方法などを迅速に決め、日本の環境技術を提供できるメリットがある。CO2の削減効果を適切に評価し、得た成果を日本の排出削減目標に充当できるのだ。
先進国は、必要以上にエネルギーや資源を消費して発展してきた経緯があり、昨今の環境問題を引き起こしている要因になっている。CO2排出量が増加してきている途上国においては、先進国の轍を踏むことなく、経済発展によって生活レベルを向上させながら、環境に配慮した社会を同時に実現する“一足飛び型”の発展が求められている。
途上国が低炭素社会に移行する上で、日本の優れた環境配慮技術が大きな支えになる。そのためにJCMが有効となるのだ。
日本は8カ国とJCMで合意しているが、重点対象国はインドネシア、ベトナム、ミャンマーなど、アジア太平洋を中心とする途上国となる。
日本はJCMを通じて、技術支援や人材育成、資金の準備など総合的に手掛ける方針だ。アジアでは都市部からCO2が発生している傾向があるが、そのリスクを分散し、石油に頼らずバイオマスなどを活用するための自立分散型エネルギーシステムの開発に注力する。
政府は、JCMの大規模案件を生み出すための調査事業を各国と連携して行っている。2013年は17の事業が採択され、省エネ、廃棄物処理、交通などの分野で12都市を対象とした調査事業が行われた。
中でも、大阪市とベトナムのホーチミン市の連携による低炭素都市形成支援調査、インドネシアのスラバヤ市における技術協力、マレーシアのイスカンダル開発地域におけるCO2削減プロジェクトの可能性調査を重点に置いていたという。
低炭素技術を世界に普及させるにあたり、同じ性能のエネルギーシステムであれば中国や韓国の方が安く提供できるため、日本は価格以外で勝負する必要がある。日本は中国や韓国などとの差異化を図るために、保守・管理を含むビジネスモデルの構築を急いでいる。