初期需要の創出について、従来の施策であるEV・PHV等購入時に消費者に交付される補助金を継続するとともに、自動車メーカーが車両価格低減を促す施策「平成25年度クリーンエネルギー自動車(CEV)等導入促進対策費補助金」も実施されている。
これは、当初(平成24年度)はCEVと同格のガソリン車との価格差の半分、ただしEV・PHVは100万円を上限に、クリーンディーゼル(CD)車は40万円を上限に、自動車メーカーに補助金を交付することで、車両価格を引き下げて消費者が購入しやすくする。
次に、2016年に同格のガソリン車との価格差を、EVが50万円、PHVが40万円、CD車が20万円を目指し、2012年から2016年までのEV・PHV、CD車の車両価格低下率を設定し、基準値を下回る、すなわちより低価格化が進んだ製品については補助対象経費を全額交付、基準値を上回った場合は3分の2にするなど、価格低減促進努力を自動車メーカーに促す。
丸山氏は、「EV・PHVの車両価格の低下が明確になることで、将来の価格低下を期待した買い控えを避けることができる。また、車両価格低下で普及が広がれば、量産効果によって生産コストが下がり、価格競争など市場が活性化する」と説明する。
2つ目の性能向上に向けた取り組みでは、EV・PHVの基幹部品であるバッテリーの性能向上に力を入れる。特に、EV・PHVのバッテリーの主流であるリチウムイオン電池の性能向上と、リチウムイオン電池に代わる将来のバッテリーの開発が課題だ。
3つ目の効率的なインフラ整備では、「ガス欠ならぬ『電欠なき』日本」を目指し、自治体等のビジョンを中心に充電インフラを整備する。すでに全国47都道府県のすべてが「充電器設置のためのビジョン」を策定している。丸山氏は、「充電設備が少ないからクルマが普及しない、クルマが少ないから充電設備の整備が進まない、こうした鶏と卵の議論ではなく、EV・PHVの普及には両方を同時に進めることが必要」と強調する。
電欠を心配することなく充実した充電設備の整備を効率的に実施するために、政府はEV・PHVの普及に積極的な自治体をモデル地域に選定して、「EV・PHVタウン構想」と呼ばれる実証実験を実施。充電インフラ整備や普及啓発などによって地域特有の普及モデルを確立し、それを全国に展開することが目的だ。この実証実験で得られたのが、(1)「計画的・効率的な整備」、(2)「普通充電器の整備」、(3)「ユーザー利便性の確保」という3つの課題である。
計画的・効率的な整備については、従来は自治体が関与しづらかったことが指摘された。それは、充電設備設置への補助金は、充電器を設置しようとする人が補助金の執行団体に個別に申請して、要件が合っていれば交付される手順だったからだ。
そこで、政府が交通流シミュレーションを活用してモデルプランを自治体に提示。自治体はモデルプランを参考にビジョンを策定し、政府が補助金を交付することで充電設備の整備を進めやすくなった。
このほか、普通充電器の整備やユーザー利便性の確保についても、設置者と利用者が異なるマンションなどへの設置をしやすくする設置工事費を含めた補助金の交付や、課金ビジネスの市場活性化による充電設備の普及と利用者の利便性向上を促すための、高機能充電器設置への補助金が交付される。
これらの補助金は「次世代自動車充電インフラ促進事業」に基づくものだが、その申請期間は2014年2月末までだった。しかし政府は、EV・PHV普及における当該事業の重要性から期間を1年延長している。
丸山氏は、「EV・PHVの世界の普及状況を見ると、2012年末のデータであるが北米が38%なのに対して日本も24%も普及している。日本はEV・PHVの先進国だ。特に沖縄県は、交通環境や観光産業の観点から、EV・PHVに適していると思われる。ぜひ、EV・PHV普及の沖縄モデルを確立して世界に発信してほしい」と締めくくった。