言うまでもなく政府はさまざまな目的からEV・PHVの普及を推進しており、各省庁ではすでに具体的な施策が数多く実行されている。そうした中、「自動車の利用実態という視点で、EVの有効性を考える必要もある」と国土交通省の堀江氏は指摘する。
日常的な自動車の利用を考えると、例えば近所のスーパーに買い物に出かけるときは1台の自動車に1人ないしは2人での乗車が多いのではないだろうか。また通勤時においても、多くの場合1人での乗車ではないだろうか。こうした日常的な自動車の利用において、1人または2人での乗車に4人乗りや5人乗りなどの自動車が必要なのか。エネルギー効率や道路や駐車場のスペース効率の観点から考えても、確かに不合理である。
堀江氏は、「国土交通省では「超小型モビリティ」の導入によるEVの効果的な普及に取り組んでいる」と説明する。
超小型モビリティが社会にもたらす便益について、狭い道路でも容易に走行できるため、観光地では来訪者の回遊性が向上して立ち寄り先が増え、地域の観光振興に貢献することや、高齢者や子育て層の移動の活性化、小口流通の効率化が挙げられる。さらに堀江氏は、「ボディがコンパクトでドアも窓もないシンプルな車両ならば、運転車と歩行者との距離が近いため、コミュニケーションが取りやすく円滑に移動できる」と説明する。いずれのケースも、EVのエネルギー効率の利点は共通だ。
超小型モビリティの普及については、超小型モビリティを実際に使ってもらう機会を提供することで、新しい移動スタイルへの気付きや、暮らしや観光で環境に配慮することの喜びを実感できるような成功事例を多数創出して国民に広く認知してもらうことを進めている。
さらに、地域の自治体がリーダーシップを発揮して、超小型モビリティをどのように活用すれば地域の魅力が引き出されるのか、住民の利便性が向上するのかなどのビジョンを示し、地域の住民や企業などとアイデアを出し合いながら進めていくことも必要だ。
堀江氏は、「乗り物があるから移動するのではなく、目的があるから移動する。目的のところを考えて(超小型モビリティの普及を)進めなければならない」と締めくくった。