沖縄本島から南西約300kmに位置する宮古島市では、水以外の食料やエネルギーといった資源のほとんどを島外に依存している。例えば、燃料は島外から海上輸送して調達する。そのため、島内のガソリン価格が高いほか、燃料を使用する火力発電の電力コストも高いという問題を抱えている。さらに、島内でまかなっている地下ダムによる地下水の汚染も問題となっており、宮古島市にとってエネルギーと環境に関する問題の解決は、島に住み続けるために不可欠なのだ。
そこで宮古島市は2008年に「エコアイランド宮古島宣言」を掲げ、自然環境を守り持続可能な循環型社会の構築に取り組んでいる。また、2009年には唯一の島しょ型環境モデル都市の認定を受け、2003年を基準に2030年度までにCO2排出量を約30%削減、2050年度までに約70%削減する目標を定めている。
この目標の達成とエコアイランド宮古島宣言の具体策の一つとして、島内でまかなえるエネルギーである太陽光や風力を活用した再生可能エネルギーによる発電を推進している。再生可能エネルギーで得た電力は、島内の家庭や事業所での利用をはじめ、高価なガソリンに代わる自動車のエネルギーとしても有効だ。
宮古島市の大金氏は、「離島である宮古島市では公共交通機関が脆弱なため、自家用車保有率が高く運輸部門のCO2排出の割合が非常に高い。そのため、電気やバイオ燃料を利用するクリーンエネルギー自動車の普及により、運輸部門におけるCO2排出量削減を推進している」と説明する。
宮古島市では、島内で収穫したサトウキビの製糖過程で出る残渣の糖蜜を原料としたバイオエタノールをガソリンと混合し、バイオエタノール燃料(E3およびE10)の製造をすでに実現している。
クリーンエネルギー自動車の普及について大金氏は、「地域振興につなげることが大事。単純にモノを売るのではなく、EV・PHVならばEVコンバージョン(既存車両のEV化改造)や車載電池を災害時に電源として利用する、バイオエタノール燃料は地域のサトウキビ生産の安定化など、既存事業の維持や新たな事業機会を生み出すような地域の産業の活性化に貢献する仕組みが不可欠」と強調する。
こうした理念に基づき宮古島市では、EV・PHVなどのクリーンエネルギー自動車の普及を通じて、観光産業や製造業への各種事業などを実施している。